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【LIFESTYLE RENOVATION】インタビュー / 高橋夫妻・後半

あなたはリノベーションという言葉を聞いて何を思い浮かべますか?
ブルックリンスタイル、北欧デザイン、モダンテイスト。

最近の見た目のかっこよさや雰囲気を追い求めるリノベーションは、この言葉自体をパッケージのように型に当てはめ、張りぼてのように無機質な存在にしてしまったと感じます。

本来リノベーションはラテン語で「再び新しい状態になる」という意味。
単なる住宅の改修だけではなく、そこに住む人の暮らしや人生が豊かになり、新たに文化を築き始めることが本来あるべきリノベーションなのではとフィールドガレージでは考えています。そして住環境や自身の働き方に再び向き合うことで人生がアップデートされ、人は本当の意味での豊かな生活が送れるのではないでしょうか?

「LIFESTYLE RENOVATION」では、このように既存の形にとらわれない新しいスタイルの衣食住を実践している人たちにスポットライトをあて、彼らが暮らし方や働き方で何を大切にしているのかをインタビューすることで、人生のリノベーションとは何か?を考えるインタビューシリーズです。

千葉県長生町に古民家を改装した「芳泉茶寮」という場所があります。

丁寧に作られた点心と中国茶が楽しめる茶房や料理教室、コンサート、古民家改修講座など、その土地に古くからある風土や文化、人の営みを汲み取る形でこの場所を再生し続けている夫妻、高橋信博さん・裕子さんに会いに行き、これまでのお二人の暮らしから今の暮らしに至るまで、そして今の暮らしで大切にしていることについてインタビューをしてきました。

釜戸で炊くご飯に方泉茶寮のラー油があればもうそれだけで十分。
前半にお話を伺った文化的な田舎暮らしで実践していることを教えてください。

例えば美味しい野菜を育てる知り合いの農家さんがよく野菜を届けてくれます。それを私たちが加工し、今度はその農家さんのところで再び販売してもらう。

こういう流れを作ることで住んでいるこの地域の経済がうまく循環するようなお手伝いができたらと考えています。家を作るのも、近所の農家さんから田んぼの土をいただき、藁をいただき、それを混ぜて発酵させて土壁をつくる。

たかだか100年前までは自分たち日本人は住環境の身の回りにある材料だけで生きてきたのだから、文献などの学術的な知恵、というよりも実際に体を動かして生きた知恵を身につけていけたらいいな、と思って生活しています。

縁側はコミュニケーションの場所

この古民家は、まさに体験の知恵を教えてくれる先生みたいな存在で、こういう作りになっているのだから、ここはこういう使い方をしていたに違いないと元々の間取りそのままにこの古民家を再生させると、この家での生活の在り方が周辺環境と融合した合理的な作りになっていることがわかります。

例えば、土を塗り直し再生した竃でお米を炊くと実に美味しい。お米を炊くには薪を使うから、目の前の里山で木を切ります。
今まで放置されていた里山には大きな木があるからそれを伐採すると、そこから新しい木が生え始めて10年後にはまた薪としてつかえるようになる。

そうすることで山が薪炭林として稼働し始める。 

落ち着いたカフェには素敵なアンティークが並ぶ

山の周りに人が住み、山に役目を与えることで、必然的に里山として周りに住む人に恵を与えてくれる場所となる。この古民家ができた当初の暮らしを理解し合理性をもって実践してみると、今よりもはるかに暮らしの知恵があったのではないかと感じます。

ここで私たちは、その昔の知恵をこの家や里山から教わりながら、全体がどう変化していくのかを感じ日々を過ごしています。

里山暮らしに欠かせない薪ストーブ

昔の人たちが暮らしの中で当たり前にしていたことを実践することで自然の法則で生きることが理にかなっていると気づいた。

昔の日本人には、自分たちを自然の一部として考える思想があったため、自然という言葉がな存在しなかったようです。この生活をしていると、夜の匂いや夏の朝の匂いなど自然の微細な変化を感じることができる。

梅を土用干しして夜露で濡れる姿なんて東京にいたときは見たことがなかったし、洗濯物も一日中干していても大丈夫だったけど、ここでは梅を干すと朝方は夜露でびっしょりと濡れるし、14時半を過ぎると空気が湿ってきます。

夏も昼間は暑いけど、15時半過ぎると風が吹いてきて、これから涼しくなってくることがわかる。だから夏は日差しの強い15時半までは休んで、風が吹いてきたら草刈りをしようというような自然の流れに抗わない、そのままに日々暮らしています。

この家は土、木、藁など自然のもののみで作られているから、もしここに私たちが住まなくなったら2、3年で自然に還り、そして最終的に朽ち果てるように作られています。

そういった面でもとても合理的にこの家はできている。

またここに住む私たちも古民家部分では空間を2つに仕切って、暖かくする部分は薪ストーブで温めるけれど、それ以外の部分は冬は寒いままにする。夏は茅葺屋根に助けられて涼しいのでクーラーは不要。古き良きを活かしながら現代的に暮らしています。 

昔の暮らしが蘇る

今の都市部の暮らしぶりとはかけ離れた暮らしですね。

私たちは人間中心に生きることで知らず知らずのうちに自分にも負荷をかけて生きているのかもしれないとお話を伺いながら感じました。

自然の恵みをありのままに享受したここでの生活は、暮らしや周辺環境に寄り添う形で知恵をつかって自分の生活に生かすのは当たり前のこと。昔は私たちが当たり前のように行ってきた自然とともに生きることが難しくなっているように感じます。

人間が無理やり自然の仕組みを変えることは不可能だから、自然の法に従って私たちが生きるほうが理にかなっています。都市部にいると私たちは人間中心に生きているけど、田舎だと自然の決め事の中で生きているから自然に従わざるを得ない。

自然を前には謙虚になり暮らすことが豊かな生き方なのではないでしょうか?

たけのこのシーズンに筍をとると竹があまり増えなくてよいのかな、とか自然からあるものを享受して生かしてもらうくらいの謙虚な暮らしを行うことで、自分たちの生き方が守られ、結果として豊かな生活が生まれる。

最小限のことをやって最大限のものを自然から享受することがここの暮らしではできるのです。

間引きしたカブをみんなでチョキチョキ

高橋夫妻にとっての理想の生き方とは?

この家が本来在るべき形というものを理解しながら実践することで、自然に従い生きる豊かな暮らしの知恵をつけていきたい。

そういった意味でもこの古民家がその知恵の結晶、学ぶ気持ちがある人にとって、ここは知恵の宝庫だと思っています。古民家に住むことで日々いろんなことを気づかされます。

自然のなかの法則や微細な変化に気づき、その中に自分たちの身を置き、自然に謙虚に暮らす理にかなった生活をしていきたいと考えています。

素敵な高橋夫妻に会いに「芳泉茶寮」に行ってみてはいかがですか?

芳泉茶寮(ほうせんさりょう)ホームページ https://www.facebook.com/hosensaryou/

TEXT : 大山貴子
PHOTO : 原直樹

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